デザインに忠実に、「らしさ」を大切に
「宝箱のリュックサック」で叶えた夢
「鞄が運ぶのは、持つ人にとっての“たからもの”である、そんな鞄の本質を改めて思い起こさせてくれたー。」作品を選んだ職人がそのように語った、りんさんの「宝箱のリュックサック」。作者のりんさんは、夏休みの宿題で工作するほど、ひたむきに宝箱へ憧れ続けていたのだとか。
見る人が思わず足を止めるほど精巧な「宝箱のリュックサック」。りんさんの夢を叶えるまでのストーリーを、職人に聞きました。
語り手:
マスミ鞄嚢株式会社井上
あえてデザインに忠実に
今までの経験をひたむきに注ぎ込む
宝箱のデザインを見たときに、子どもの頃、鞄いっぱいにおもちゃなどを詰め込んでお出かけをしていたことを思い出し、とても懐かしい気持ちになりました。また、マスミ鞄嚢株式会社では、箱型の鞄を多く生産しているため、当社ならではの技術を活かした鞄作りができるのではないかー。そんなふうに思ったのも、選んだ理由の1つです。
製作前の打ち合わせのときに、りんさんがダンボールで作った「宝箱のリュック」を見せてくれました。すごくはっきりと、頭の中に「宝箱像」を思い描いていることが伝わってきて、今回はデザインに忠実に、りんさんの思い描く宝箱を作ろう、と決心しました。
箱型の鞄は多く作ってきましたが、宝箱の形で、しかもリュックというのはまるっきり初めてでした。木枠を使って形を整える方法だと重くなりすぎてしまうため、今回は、縫製と生地のみで宝箱の形にする必要があります。どんな構造で、どんな方法でー、頭を巡らせても、本当に形になるのか?という疑問が拭えないまま、鞄作りがスタートしました。
製作期間は、当初予定していたよりも2倍以上をかけて取り組みました。形がシンプルなので、少しのズレも許されない、緻密な作業を幾重にも重ねました。りんさんの持つイメージに少しでも近づけていくため、同時に豊岡鞄としての品質基準をクリアするため、職人同士の知恵を掛け合わせて、隅々まで技術を注ぎ込みました。
リュックとしての機能性を考え、ランドセルのような持ち手を上につけることも考えましたが、宝箱のデザインを優先するため今回はあえて省きました。
開け閉めまで宝箱に忠実に、口枠をつけてぱかっと開く仕様にしました。中で荷物が散らばることがないよう、仕切りをつけたのもポイントです。
りんさんに宝箱を贈って、喜んで欲しい。ただその一心で取り組みました。このリュックが、きっとりんさんがこれから出会うであろう、たくさんの宝物でいっぱいになってくれるようにと願っています。
夢が叶ったときの感想は?
作者のりんさんに聞きました
−「夢のかばん」を受け取ったとき、どんな気持ちになりましたか?
初めて鞄を見たとき、キラッキラに輝いて見えて、嬉しくて心が跳ねました。ずっと欲しかった本物の宝箱だと思いました。ベルトのクサリと、前のところに付いているカギ穴がお気に入りです!
−「夢のかばん」を持って、どんなところに行きたいですか?
玄武洞ミュージアム(※豊岡市にある石の博物館)に行きたいです!
−職人にひとことお願いします!
早く友達や先生や親戚に見せたいです。本当に素敵な鞄をありがとうございました!
プロジェクト総集ムービーを公開中
プロジェクトのスタートから完結までを動画でご覧いただけます。子どもたちの夢、職人の想い。「夢のかばん」づくりの過程を、オリジナル楽曲とともにお楽しみください。